荒川区風水害対応方針が示されました

その他

はじめに

昨年の台風19号に於ける自主避難場所、及び緊急避難場所に関しての混乱の教訓を省みてでしょう、2020年2月(更新日2020年2月19日)、荒川区防災課より『荒川区風水害対応方針』が発表されました。

荒川区ホームページ

荒川区風水害対応方針
 

リンク切れに備えて一応荒川区ホームページからダウンロードしたPDFを置いておきます。
荒川区風水害対応方針(概要版)
荒川区風水害対応方針(本書)

ここでは、この『荒川区風水害対応方針』を見て、私が先日ブログで指摘した課題に対応されているかを中心に見ていきたいと思います。

『荒川区風水害対応方針』に於ける対策

私の指摘した課題

先日のブログ記事、『台風19号における荒川区の対応についての総括』では、2つの課題を指摘しました。

  • 「自主避難場所」の適切な設置と運営
  • 情報発信の強化
台風19号における荒川区の対応についての総括
令和元年10月12日から同13日にかけて関東地方に超大型台風19号が上陸しました。 被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。 荒川区では物的被害はあるも、人的被害は報告なし 荒川区の被害状況 ・人的被害 報告なし ...

自主避難場所の適切な設置と運営

荒川区内では最終的に警戒レベル3が発令された台風19号に於ける最も大きな混乱の一つが、「自主避難場所」の設置に関するものであったと考えています。

「自主避難場所」とは、警戒レベル2の段階で設置される避難場所で、警戒レベル3(避難準備・高齢者等避難開始)発令と同時に「緊急避難場所」に切り替わります。
台風19号では、この「自主避難場所」が当初18箇所を開設。
その後、避難者の増加・岩淵水門の水位の上昇に伴い、追加で開設をしていきました。
最終的な避難場所の数は56箇所でした。

警戒レベル3未満の段階で設置される自主避難場所ですが、台風19号の時には未だ荒川区には警戒レベル4はおろか、警戒レベル3すらも発令されていない地域であるにも関わらず、多くの区民が積極的に早めの避難を希望していました。

要因としては、

  • 近隣地域での警戒レベル3以上の発令があり、早めの避難を促す情報に触れていた。
  • 交通機関の計画運休や大手メディアの報道等により、今後警戒レベル3以上が発令される可能性が高いと予想された
  • 台風のピークが夜になり、警戒レベル4(避難勧告)が出るとすれば日没後になる可能性があった

が、あった為と考えられます。

特に、3つ目の「台風のピークが夜になり、警戒レベル4(避難勧告)が出るとすれば日没後になる可能性があった」は非常に重要です。
警報レベル3以上が発令されている様な荒天の中で、まして日没後の避難となれば、それ自体が非常に危険です。

しかし、一旦避難勧告が出てしまえば、堅牢な建物の地上5メートル以上(3階以上)の階への垂直避難が難しい区民は、避難場所に避難しなければ安全を確保できません。
避難自体のリスクの高まる日没後の避難を避けようと思えば、早い段階での避難をするしか無かったはずです。

日没前に早めの自主避難を決めた多くの区民の皆さんの判断は極めて妥当だったのです。

もちろん、自主・緊急避難場所への避難は当該警戒レベル発令のギリギリまでは、経過を見ながらという判断も、必ずしも間違いとは言えません。
と言うのも、避難場所での滞在は決して快適とは言え無いからです。
大勢の人々が集まる中でプライバシーの確保は困難ですし、食料は持参しなければなりませんし、非常にストレスの掛かる環境です。
従って、この辺りの判断が人によって違うのは当然のことです。
いずれにせよ、
①警戒レベル5・災害発生(台風19号時で言えば河川の氾濫)の一つ前段階の警戒レベル4・避難勧告までの間に、
②堅牢な建物(自宅または避難先(緊急避難場所を含む))の地上5メートル以上(およそ3階以上)への垂直避難が完了していれば、
災害の直接被害による生命の危険に対するリスクは格段に下がります。

台風19号の教訓から、自主避難場所の適切な設置と運営に関して、十分な自主避難場所の数と、適切な設置のタイミング、運営の人員確保が必要な事がわかります。

『荒川区風水害対応方針』で、この3点に関してどの様に書かれているか見てみます。

自主避難場所の設置数

本書・第1章・第4節・1-(1)『自主避難場所及び緊急避難場所として開設する施設』に『図表4 自主避難場所及び緊急避難場所の一覧』として、52箇所が示されています。

非常に大きな台風であった19号の時に、当初18箇所だったことから考えれば、大きな改善ですし、最終的に56箇所であった事を鑑みると、おおむね妥当な数と言えるのでは無いでしょうか。

設置のタイミング

本書・第1章・第2節・(2)『自主避難場所の開設の避難』に示されている箇所が該当するのでしょうか。

大型台風の接近等により、気象庁等から河川氾濫や暴風による大規模な被害発生の可能性が言及されている場合や、
気象庁等が発表する気象情報や降雨予想等に基づき必要と認められる場合、
区は、事前に、自宅で過ごす事が不安な区民が早い段階で自主的に避難するための「自主避難場所」を開設する。
〜本書より一部抜粋(改行とアンダーラインは筆者加筆)

自主避難場所開設の基準としては妥当だと思うのですが、実際の開設のタイミングに関しては、ただ「事前に」とだけあるのみで、具体的には示されていません。

現実的な話として、具体的なタイミングに関しては、日没や実際の風雨の状況によってケースバイケースの部分もあり、杓子定規に基準の通りであるより、状況に応じて柔軟に対応して欲しいところなので、明文化しづらいのも理解できます。
とは言え、もう少し細かい記述が欲しい箇所ではあり、少し残念に感じました。

なぜならば、設置のタイミングは次の「運営の人員確保」にも関わるからです。

運営の人員確保

運営にあたる区役所職員に関する規定は本書・第1章・第4節・1-(2)『避難場所担当職員の事前指定』に「あらかじめローテーションも考慮の上、指定する」
と示されるに留まり、具体的な人数は示されていません。
実は、この『荒川区風水害対応方針』に先立っての区議会では、「各避難場所に10人を配置する」と言う話も出ていました。
となると、10人×52箇所ですから、単純に520人が配置されることになるのでしょうか。
当然、日をまたげば、交代もしながらとなるはずです。

市役所職員がおよそ1,500人で、避難場所以外にも必要な人員はあるはずですから、ほとんど総動員体制になるはずです。
10人はちょっと現実的で無い様な気もします。

台風19号の時には、公共交通機関が計画運休を実施しました。
区役所職員の約6割が区外からの通勤者である事を考えると、タイミング次第では、そもそも予定通りに職員を召集する事も困難なはずです。
様々な要因で予定通り集まらない事を見越して、多めに事前指定を10人するのか。

運営の人員確保については、現段階で文書として出せる段階では無いのかもしれません。
早急な結論を強く期待します。

情報発信の強化

情報発信に関しては、情報の優位性の確保と発信のチャンネルの多様性とそれぞれの独立性を指摘しました。

情報の優位性の確保に関しては、様々な地域をカバーする全国メディアや、先立って警戒レベルの上がっている近隣区の情報などに、区の発信する情報が埋没し、区民が混乱したり、誤った情報に基づき行動してしまうことを防ぐために重要になります。

あとの2つ、発信のチャンネルの多様性とそれぞれの独立性、は基本的には、同じ事を目的としています。
語弊がある事を承知で言えば、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」です。

これは、各メディアの運営側や、それを利用する区役所の運用方法を「下手」と言うものでは、全くありません。

警戒レベルが高まった非常事態下では、様々な障害によって機能不全に陥る可能性が高まっていることを指しています。
各メディア運営側の混乱ももしかしたらあるかもしれませんが、それよりも停電・通信網の障害・放送電波の受発信の障害などの、特にハード面に起因する機能不全は当然起こり得ると考えておくべきだと思います。
この様な、非常事態下の情報発信は、どの様なメディア手段を持ってしても「下手な鉄砲」になりかねないと言う意味です。

であるならば、その機能不全による情報の不達の可能性を減らすには、たくさんのメディアを使って、例えばWEBサイトに集約してしまうのではなく、それぞれ並行・独立して情報発信することを重要視すべきだと考えています。

それとは逆に、例えば、台風19号時のサーバーダウンに関しては、単純にWEBサイトを表示するサーバーが当然想定されるべきアクセス数に耐えられない脆弱なものではいけません。
非常事態下を言い訳にできる機能不全ではありませんから、サーバーの補強は当然すべきですし、そう指摘しました。
(サーバーの補強に関しては既に対応済みとの回答がありました。)

情報の優位性の確保

本書には、記述はありませんでした。
これに関しては、荒川区にとっては、警戒レベル3未満の状況を含んだ案件であるため、本書の扱う範疇からは外れるためでしょうか。

とは言え、議会でも指摘した事案で、防災課の方からも一定の回答がありました。
それによると、近隣区で荒川区よりも高いレベルの警戒レベルが発令された場合には、SNS等の複数のチャンネルでその事を踏まえながら、荒川区ではまだそこまでの危険度には無いことも発信していくとの回答でした。

この手の情報は状況によって刻々と変化していくものですので、発信の仕方にも慎重にならざるを得ない側面もありますので(現時点で安全だと発信しても、直後に警戒レベルをあげるといった状況も有り得る)、対応も手探りになるのも理解できる部分ではあります。

チャンネルの多様性の確保

本書・第1章・第3節・1-(2)『情報伝達』に『図表4 情報伝達手段』として示されています。
以前、当ブログで揚げた6チャンネルに加え、

  • 防災行政無線
  • 緊急・速報メール/エリアメール
  • 荒川区防災アプリ
  • 安心安全パトロールカー
  • 防災ラジオ(準備予定)

の5チャンネルが追加されています。

この中でも、多様な年齢層に対応する意味で、特に「防災ラジオ」の準備に対して、早急に行ってもらえる様に議会で念を押しました。

手段も時代によって重要性や有用性が変化していくものですので、今後もより有効な手段に更新していく事を望みます。

チャンネルの独立性の確保

この件に関しても、本書に記述は見られませんが、議会で回答が有りました。

そもそも、この件はツイッター・フェイスブックの投稿に情報を載せるのではなく、単にWEBサイトへ誘導する様なリンクが貼られていた事が、サーバーダウンの理由の一つになってしまったのでは無いかとの考えから指摘したのですが、その事には、現場でも気づいていた様で、途中からそれぞれに情報を載せる様にシフトしていた様です。

実際には、シフトしたにも関わらず、サーバーの元々のスペックの貧弱さは如何ともし難かったというのが実情だった様です。

サーバーの補強も済んでいる事ですし、それぞれのチャンネルで独立して情報を載せるという体制にしていくとのことでしたので、この件は現段階での対応としては、これでいいのかなと思っています。

まとめ

いくつかの課題にはこれからの対応待ちの部分は有りますし、記述がなく不十分に感じる課題も有りますが、概して多くの課題に対して網羅的に対応案が示されており、台風19号の教訓を生かす方向性は一定度示されている様に感じました。

今後の防災体制が一層充実していく様、これからも弛まぬ改善の努力を継続していける様、私も尽力していく所存です。